僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
有須は専門学校に進んで、2年で卒業。誰よりも早く社会人になった有須は栄養士として3年働き、23歳で管理栄養士の国家資格を受験して合格。
同じ年にお嫁さんになり、働きながらも彗と同棲を始めて今はお母さんになった。
彗は4年制大学を卒業後、コネ入社みたいで嫌だと渋っていたけど結局パパの会社に入った。パパの身内だと知らない人事部の人が面接して、すんなりと合格したからだ。
今じゃもう身内だとバレているけど、特に困ったことはないらしい。入社1年目で結婚したから、そこは散々弄られたって言ってた。
彗と有須は、あたしの地元に住んでいることになる。
彗はパパの会社で働いてるし、有須は彗と結婚したんだから必然的なことなんだろうけど、変な感じだ。
祠稀は教職課程が設置されている大学に4年通って、教員試験にも合格したから無事に教師になった。
公立の共学に赴任して、受け持ってる教科は数学。
1年目と2年目は副担任を務めて、3年目は担任になったらしい。女子生徒にモテるだとか、告られたとか言っていたけど、その辺はどうでもいい。
何より驚いたのは、祠稀まであたしたちが住む県内の高校に、今年から赴任になったこと。
定時制の夜間部教員になりたかったみたいだから本人は喜んでいたけど、何か裏工作でもしたんじゃないかと思えて仕方ない。
「……やっぱ運命とか、そういうことなのかな」
「は? 何言ってんだ、凪」
「なんでもない」
住む場所はそれぞれ違うけど、8年ぶりに逢える距離に4人がそろったのは事実で。予定より遙かに早くそろったのも事実。
「喜んでいいのかなー」
「なんだよさっきから。ひとり言? 黙って喜んどけ」
相変わらずのその軽さは、どうにかならないのか……。
そもそも祠稀が、5年は同じ高校に務めると思うって言ってたのに。今さら、根拠も何もなかったんだろうなと気付いたって遅いけど。
「そういや、名前決めたわけ? だいぶ悩んでたけど」
思い出したように祠稀が尋ねると、有須と彗は顔を見合わせて口をほころばせた。
その姿を見て、ああ、幸せそうだなぁ……って思う。