僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「凪」
「……ん?」
愛の拳にお邪魔させていた指を引き抜きながら、有須に視線を移す。
「もう少しだけ待っててね」
その言葉に嬉しくなったのは本当だけれど、申しわけない気持ちが少しもないわけじゃなかった。
あたしはあの日、あの雪ばかり降っていた16歳の冬から、少しは変われたのかなと思う。
パパのことは……サヤには、変わらず想いを寄せていた。
けれど宙が産まれて、何か別のモノになってしまった気がする。
例えば四角い石が海で流されて、何かにぶつかりながら流されて、段々と角が丸くなっていくみたいに。
きっとあたしの世界はとても狭くて、だけど全てで。16歳の冬に、そこから抜け出したから変わっていけたのかもしれない。
何もかもが一気に変化したわけじゃないけれど、茫漠とした時間は確実にあたしと共にあって、8年という歳月は本当に少しずつ、あたしや周りを変化させた。
彗や有須や祠稀に、高校の友達と大学の友達、家族に職場の先輩や同僚。
人と関わることは世界が拡がっていくようで、悪い意味でも良い意味でも、自分という人間が揉みくちゃにされる。
それは多分生きる上で必要なもののひとつで、16歳になるまでのあたしが避けていたことだった。
あの頃と同じで、今でも自分に自信はない。
これから先への漠然とした不安もあるし、目の前にあるものに頭を抱える日だってある。
それでも毎日、些細なことでも笑っていたいと思うし、頑張るよりは楽しみたいと思う。
がむしゃらにもなってみたいし、バカみたいな夢だって見ていたい。
「――うん。まだ、ちょっとしか準備してないけど……待ってる」
そう言うと、有須も目元を柔くして微笑みを向けてくれた。
「……でも有須、ホントにいいの?」
髪を耳にかけながら自分でも分かるくらい苦笑すると、有須はキョトンとしてから訴えかけるように拳を握る。