僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「だって、もう決めたもんっ!」
「や、それは嬉しいけど……お母さんになったんだから、もうちょっと彗とよく考えたほうが……」
「だあから! お前は黙って喜んどきゃいいんだよ!」
祠稀には聞いてないんだけど……。
そう目で訴えると、彗がくつくつと忍び笑う。
「俺らは凪に便乗した形なんだから、気にすることないのに」
「そうだよ。あたしたちが自分で決めたことなんだよ?」
夫婦そろって言われると、なんて返していいのか分からない。
新婚生活……って、もう3年経ってるから満喫するようなことはないのかもしれないけど、愛と3人で過ごす時間にあたしは邪魔じゃないのかなっていう考えがどうしても拭えなかった。
ああでも……。
『凪の家族、増えたね』
そんな風に言ってくれる意味は、分かってるつもりなんだ。
「何をそんなに遠慮してんのか知らねーけど、高1の時と同じだと思えばいいだろ」
祠稀が呆れるように言って、あたしは少し考えてから溜め息を吐いた。
「今回はあたしが募集したわけじゃないんだけど」
「かわいくねー……」
だって本当のことだもん。
「お前はアレだな、嬉しいくせに相変わらず素直じゃねーな」
「ぶはっ! くくっ……」
なんで彗が吹き出すかな……。
これじゃあほんとに、遠慮してるあたしがバカみたいだ。
ぽりぽりと首の後ろを掻いて、愛の寝顔を見てから3人の顔を眺める。
みんな成人して、世間では大人になった。
だけどあたしはまだ社会人1年生で、彗や祠稀も会社ではまだ若造扱いだし、有須も新米ママだ。