僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「どーも。俺たちのことは聞いてただろうけど、逢うのは初めましてだな。日向 祠稀。一応、新んとこの教師」

「……夢虹 彗。有須の旦那で、この家の稼ぎ柱?」

「あはは! この子が娘の愛で、あたしが有須です。栄養管理担当だから、好きな食べ物教えてね」


若い3人が軽く頭を下げたのを確認して、あたしはパンッと両手を叩いて視線を集める。


「もう知ってると思うけど、夢虹 凪。病院でカウンセラーしてる。隠し事は見抜くから、気を付けてね?」


にこりと笑みを作ると、高校生になったばかりの3人は目を白黒させた。


「怖いなー! 凪さん優しそうに見えるのに!」

「……」

「……バッカみたい」


新はやっぱり笑って、禎也も変わらず無反応、蘭は予想通り毒づく子みたい。


「凪はコエーから怒らせんなよ」

「……とりあえずお腹空かない?」

「じゃ、じゃあご飯にしよっか! ねっ!」


祠稀は楽しげで、彗はマイペースで、有須は少し緊張してる。


これから3年間、どんな毎日になるだろう。うまくやっていけるかな。


彼らと彼女は、わけあってこの家に来た。詳しいことは分からない。親御さんは簡単な説明しかしてくれなかったから。


それでも受け入れたあたしたちを、この3人は微塵も信じていなければ、頼る気もないんだろうと思う。


笑顔の裏に隠された痛み。
無関心の裏に隠された闇。
強気の裏に隠された弱さ。


見たことがあるようで、全く別物かもしれない。身近ではなくても、他人事じゃないかもしれない。

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