僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
どこへ行きたい?
何を求めてる?
ゴールも分からず歩くのは、不確かなものを掴むには、蜃気楼の中を歩くようで苦しいかな。
それでも君たちがここにいるのは、意味があることだと思うから。
まだ見ぬ愛があるのなら、見つけ出してほしいって思うから。
陽炎は容赦なく迎えに来るけれど、眠れない夜の向こうに歩き出して。
――ギシッと、靴を脱いだ3人が玄関に上がった。
「ようこそ、羊荘へ。今日からよろしくね」
各々の表情を、瞳を見つめながら微笑んだ。
――あたしたちは、あの頃の自分たちに逢えるのなら、なんて言葉をかけるだろう。
頑張れ? 負けるな?
それとも、そこら中に散りばめられた愛の欠片をかき集めて渡そうか。
遠くに見えた桜雲と電車の音。雨に濡れたアスファルトの匂い。
夕暮れに染まる蒸し暑い教室。風に揺れて舞うもみじ。暖房がきいたリビングで寝転んだ冬の日。
あの頃と似たような情景に出逢うたび、隠れていた感情が心をさらってく。
あの頃の自分に逢えるなら、あたしは自分の胸を指すだろう。
探し物は、そこにあったよ。
【END】