僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……なんで?」


どうして、祠稀。


必要だと、思ってほしいわけじゃない。


信じてほしいと、思ってるわけじゃない。


ただ、俺たちの絆は確かにあると。そう、思わせてほしかった。



「帰れ。話すことなんてない」


祠稀はもう、それすらも否定したいんだね。


「……祠稀」


向けられた背中に呼び掛けると、祠稀はゆっくり振り返る。


俺を見上げる瞳は、家で見せるものとは全く別のものだった。


「俺たちは、祠稀の何?」


眉を下げて、口の端を僅かに上げて言う俺に、祠稀は目を見張る。


紡げる言葉がもう何もなくて、その言葉を最後に、俺は路地裏を去った。



悔しさと悲しさが入り混じる中、このことは、凪には絶対に言わないと、心に誓って。



.
< 93 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop