僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「捨てないで」

「……」


チカの揺れる瞳に、震える声に、胸がえぐられるように痛む。


幼い、まだあどけなさが残る顔。そこに一筋の涙を流してすがってくるチカに、歯を食いしばる。


「僕を捨てないで、祠稀……」


再び零れそうになる涙と一緒に、チカを抱き寄せた。


何者からも守るように。俺だけはチカの味方だと、そう、伝えるために。


強く、強く、抱き締めた。


「捨てねぇよ」


捨てるわけがない。捨てられるわけがない。捨てる理由なんて、どこにもない。


「……言っただろ、お前を連れだした時。お前が望むなら、俺は絶対、捨てたりしねぇ」


真っ暗な夜に、嘘のように光る輝きに騙されて、さらなる深みに落ちないように。


幼い者を、まるでゴミのように扱う大人たちに、理不尽な大人たちに、屈服なんてしないように。


俺は、闇夜で泣いていたお前を連れ出した。


冷えた手を取って、どこまでも、どこまでも。


その果てに光なんてないと分かっていながら、無邪気に笑うお前を、手放せなかった。

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