僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ

動き出す闇



◆Side:有須


「祠稀、来ないね……」


教室で呟いたあたしの隣に立つ凪が、小さくため息をつく。その手には、携帯。


「ダメだ。まだ電源切れてる」


窓に寄りかかる凪の隣では、彗がぼんやりと窓の外を見ていた。


「学校にも来ないのかな?」

「……」


わからないから、誰も答えられない。


あたしは教室の壁にかかる時計を見てから、廊下を歩く生徒を眺める。


……昨日、祠稀は帰ってこなかった。


コンビニに行った彗からも連絡がなく、あたしと凪は深夜1時までリビングで待っていたんだけど、帰ってきた彗は何も買っておらず、「何しに行ったか忘れた」と言って、凪に怒られていた。


あたしと凪は待っている間、何回か祠稀に電話をしたんだけれど、繋がることはなかった。


……もうお昼なのに。どうしたんだろう、祠稀……。


あたしたちの間に重い空気が流れた時、突然廊下が騒がしくなった。
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