僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「おい、喧嘩だってよ!」
廊下を歩いていた生徒や立ち止まっていた生徒が、一斉に同じ方向に向かって歩き出す。
あたしは体が硬直する感覚を覚え、次に廊下から聞こえた声に冷や汗が出た。
「また日向だって!」
瞬間、視界の端で赤い髪が靡く。
「凪っ!」
教室を飛び出した凪を呼んでも、すぐにその姿は視界から消えてしまった。
「……行こう、有須」
見上げた彗の横顔にぎくりとした。
怒ってる……よね?
彗のあとに続き教室を出て、生徒が流れる方向にあたしたちも向かった。
ただ真っすぐ前を見る彗の後ろを歩きながら、あたしは胸に渦巻く不安に押し潰されそうになる。
どうしてなの、祠稀……。
今までどこにいたの? なんで喧嘩してるの? いったい、何が――…。