年上の先生
治療が始まって、
やはり髪の毛が抜けた。

丸坊主の私は帽子を被り、
点滴を打つ腕を見ていた。

「辛いですか?」

女性の看護師さんが、
声を掛けてきた。

「はい。
卒業式にはやはり
出れませんでしたから。」

そう昨日私が本来、
出席する筈の大学の卒業式が
終わってしまった。

「私も中学の卒業式には
出れませんでした。」

そう看護師さんが呟き、
私は不思議と看護師さんの
顔を見てしまった。

「卒業式の直前に、
交通事故にあってしまい、
左胸を無くしたのよ。」

「うそ・・・・。」

「本当なの。
ショックで高校も行けなく、
家に引きこもりになって、
しまったの。

けど、入院していた、
看護師さんが助けてくれたの。

胸が無くなったけど、
生きる希望は捨ててはいけない。
そんな言葉を掛けてくれて、
ようやく立ち直ったの。」

そう看護師さんは、
私に教えてくれた。
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