年上の先生
「胸を見れましたか?」

「うん。
直ぐには無理だった。
けどね、好きな人が出来て、
私は正直に話した。

すると彼は傷の残っている
胸にキスをしてくれた。
胸が無くっても、
君さえ生きて傍にいてくれたら、
俺はどんなに幸せか。と、
彼は言ってくれた。」

「そうですか。」

私はまだ自分の胸を
見てはいない。

消毒の時は目を瞑り、
見ないようにしていた。

「現実を受け入れる事は、
本当に辛いわよ。

けどあなたには、
素晴らしい旦那様がいるから、
安心だわね。」

「はい!!」

私は飛びっきりの笑顔で、
看護師さんに返事をした。

1人で生きて行く訳でも
一生一人ではない。

信二という素晴らしい
主人が傍にいるから、
私は安心しないといけない。

私が不安にいるから、
信二も傷を見る勇気すら
ないかも知れない。

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