空をなくしたその先に
見上げれば、襲ってきた空賊とどこかの部隊が空戦に入っている。

やってきた援護に胸をなでおろす余裕もなかった。

船室へ戻るための階段は狭く、大人数が一度に降りるのは不可能だ。

階段にたどり着いた乗客はよかったが、
たどり着けなかった者は、
上での戦いに巻き込まれないよう身の隠し場所をもとめて、
甲板上を右往左往している。

非常階段の存在を思い出した者は、
まだ冷静な判断力を失っていなかったということなのだろう。

船員たちが、
誘導を試みてはいるのだが、
その努力もむなしい物だった。

響く女性の悲鳴。
泣きわめく子ども。

メレディアーナ号からも、
銃声が響く。
船員たちが応戦を開始したのだ。

撃墜された飛行機が、
船の横を落ちていく。

脱出装置が故障したのだろうか。

必死にボタンを叩いているが、脱出装置が動作する気配はなかった。
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