空をなくしたその先に
ディオのすぐ目の前まで近づくと、ぐっと身を乗り出した。

碧玉色の瞳が、炎を移してゆれた。

ディオは目をそらせた。

これほど間近で異性に見つめられた経験など、ほとんどない。
ましてや相手は、宮廷内にもなかなかいないほどの美少女だ。
意識しないではいられない。


「ね……あたしの顔、どう思う?」


真顔でダナはたずねた。


「どうって言われても……」


どう答えればいいのだろう。


「きれい?かわいい?それとも好みじゃない?」


せかすようにダナは言葉を続ける。

今顔の美醜について語る必要はあるのかと、
問いただそうかとも思ったのだが。

ダナの剣幕に負けて、
ディオはあいまいな返事を返した。


「そ……そうだね、きれいだと思う……すごく」


最後にすごく、とつけたしたのは。

ただきれいだというだけでは、ダナの機嫌をそこねるのではないかと思ったからだった。

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