空をなくしたその先に
ダナに並んだヘクターは、表情を引き締めた。


「照準が狂ってた。
急いで調整し直したけど、整備班に言っておいて」

「だから出撃前に最終チェックさせてるんだろうが。

とはいえ、たるんでるのは間違いないな。

他のやつらにも、もう一度チェックさせるか」


頼むよ、と彼は言ってダナを引き寄せた。

のびあがるようにして、ダナがその耳に何かささやく。


「ヘクター。ダナ」


ビクトールはあきれた声を出した。


「いちゃつくのもほどほどにしとけ。

お前ら、緊張感なさすぎだぞ」


くすくすと笑いながら、ダナはヘクターを船内へと引っ張っていく。

ダナに引かれたまま、ヘクターはもう一度こちらをふりかえって大きく手をふった。


「まったく」


ルッツを呼んで、もう一度整備を確認するよう言いつけてから、ビクトールがぼやいた。

< 107 / 564 >

この作品をシェア

pagetop