空をなくしたその先に
ダナと同じように、くすくすと笑いながらサラが返す。


「でも、団長は喜ばしいと思っておいでしょう?

ハーリィとオリガの娘と団長の息子ですもの」


ふん、と鼻を鳴らしてビクトールはぼやいた。


「俺はダナが十八になるまで待てと言ったんだ。

それをあいつときたら、

『ダナが十八になるまで、俺とダナ両方が生きている保証はどこにあるんだ?』

だとよ」


髪に手をつっこんでかき回しながらの、ビクトールのぼやきは続く。

対するサラの声は静かなものだった。


「ヘクターの言うことにも、一理はあります。

私たちの生き方を考えれば。

ましてや二人で一つの機に乗っているんですもの。

気がせいても仕方のないことでしょう?」

「まあな」


そうサラには言いながらも、ビクトールはもやもやとしたものを抱え込んでいた。

気にかかるのはヘクターとダナのことではない。
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