空をなくしたその先に
落ちていくパイロットの絶望した瞳と、ディオの瞳が交錯した。

この高さから墜落すれば、生き延びることなどほとんど不可能だ。

たとえ下が海だとしても。

視線が交わったのはほんの一瞬。

すぐにパイロットは、煙をあげる飛行機ごと見えなくなった。

これが空の戦いなんだ。

ディオは書類を入れた内ポケットを上から強く押さえつける。
何としても、
この研究成果を国に持ち帰る。
そうすれば、
空賊を根絶やしにすることだってできる。

こんなところで終わるわけにはいかない。

甲板に一機の戦闘機がとまっている。

茶と赤で塗装されたそれは、
この状況下で静かに発進の時を待っていた。


「乗って!」


後ろから尻を押し上げられ、
戦闘機の後部座席に押し込まれた。


「ベルト!」


言われるままに、ディオはシートベルトで体を座席に固定する。

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