空をなくしたその先に
傭兵としての活動を行わない空賊の場合は、戦闘訓練をそれほど行っているわけではない。

今回のように、空賊先滅作戦が展開された場合には、

すかさず戦闘領域から脱出をはかる。

彼らの装備では、戦うよりも逃げる方が生き残る確率がはるかに高いとわかっているからだ。

投降するのは最後の手段で、

一度捕虜になったらよくて生涯強制労働所行き、

悪ければ死刑の二択しか残されていない。

今日相手にするのは、それほど手強い相手ではないはずなのだが。

ビクトールの厳しい訓戒を受けて、整備不良などアーティカではめったに起こることではない。

整備不良の機体で出撃することが、どれほど危ないことか皆身をもって知っている。

それでも発生した整備不良。

大切な仲間が逝ってからちょうど十年目という日付。

何かが今日はやめておけと、語りかけるような気がする。
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