空をなくしたその先に
迷信を信じやすいと言うのは、空に生きる者も海に生きる者も共通して持ち合わせた気質だ。

人の力ではどうにもならない自然の力に直接対峙することの多い彼らにとっては、

迷信は生き残るための知恵でもある。

ビクトールはさほど迷信を信じやすい方ではない。

己の才覚一つで生き残ってきたとも思わないが、迷信に惑わされるのは愚かなことだと思う。

それでも。

何ともいえない予感が、ビクトールの胸を締めつけた。


「出撃やめるか?」


出すつもりのなかった言葉が、口からこぼれた。


「かまいませんが、空賊たちは本拠地を移動すると思いますよ。

今回のやつらは、飛行島一つ占領していますから」


冷静な声が、状況を報告する。


「それはわかっちゃいるんだが……どうにもこうにも嫌な予感がするんだよな」

「やめましょう」


サラの決断は早かった。
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