空をなくしたその先に
「ヘクターとダナがあの調子では、

あなたが死ぬ頃には、曾孫の子どもも生まれていそうですね」


サラの口元に刻みつけられた笑みは、どんな時でも姿を消そうとはしない。

どれだけ、胸の痛みを覚えようとも。

今はその笑みが歪んでいないことを祈りながら、サラはビクトールの次の指示を待つ。

ビクトールが一族を率いるようになってから、アーティカは無敗だ。

今回ばかりは初めての敗戦になるだろうが、最後に勝てばいい。


「ダナとヘクター……戦闘機部隊はまだか」

「まだです」


ビクトールが見上げた空は、まだ明るい。

つい先ほどまでは、空を行くのに絶好の日和だと思っていたはずなのだが。

今は、砲弾のあげる煙が白く濁った膜をはっている。

ビクトールは息をついた。
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