空をなくしたその先に
整然と部隊は撤退していく。

強い部隊は、撤退の際も隙を見せない。

リディアスベイルに最後に残された任務は、味方艦隊の撤退の援護だ。


「一番前の艦を集中して撃て!」


リディアスベイルから、弾が発射される。

狙いを誤ることなく、一番先頭に出ていた敵の艦が大きく揺れた。

その瞬間を逃さず、ビクトールはリディアスベイルを撤退の構えに移行させようとした。

味方の艦隊は、ほぼ安全圏へと脱出を終えている。


「よし撤退……しまった!」


ビクトールの声が終わる前に、船全体が揺れた。

爆発に艦橋の窓が割れて、一気に空気が流れ込む。

強風などというものではない。
皆、吹き飛ばされた。

床に叩きつけられたサラは、
せき込みながら立ち上がった。

爆発音で、耳が痛む。

室内にたちこめる煙に、目をやられ、涙がぼろぼろと落ちた。

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