空をなくしたその先に
「ヘクターは……もう火葬しました。

あの……あなたが目を覚ます前に。

……その……遺体が、腐敗すると大変ですので」


口ごもりながらも早口に吐き出して、
サラはビクトールを盗み見る。

アーティカに墓は存在しない。
狭い島で暮らしているからだ。

死亡した者は火葬され、灰は空からまき散らされる。

ヘクターの灰を入れた壷は、すぐそばのテーブルの上に置いてある。

それに視線を投げかけ、すぐにそらせるとビクトールは、
布団を頭の上まで引っ張りあげた。

部屋の中を重苦しい沈黙がおおう。

サラは、二人を発見したときのことを思い出した。

サラ自ら捜索隊の一員となって、海の上を飛び回った。

機体発見の一報を受けて、かけつけた先で見たものは。

かばうように、ダナを腕の中に抱えて倒れているヘクターの姿だった。
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