空をなくしたその先に
「サラ」


布団の中から、くぐもったビクトールの声がする。


「明日には戻る。今日一日はほっといてくれ」

「そのように手配します」


ビクトールから見えないのはわかっていて、サラは頭を深くたれた。

言葉通り、翌日にはビクトールはベッドから離れた。

とはいっても、当然普通に日常生活が送れるはずもなく、

執務室に座り心地のよい長椅子を持ち込んでの復帰となった。


「そんなに無理をなさらなくても」


そう言うサラに、ビクトールは厳しい顔で答える。


「そんなわけにはいかないさ。今回のことは俺の失態だからな」


ただの空族退治だったはずが、どこで情報が狂ったのだろう。

ビクトールに命令が下されるまでの経路を、彼は裏から手を回して調べ始めていた。

不幸中の幸いというべきなのだろうか。

重傷の負傷者のうちアーティカの医師が手に負えないと判断した患者は、ダナだけだった。

< 136 / 564 >

この作品をシェア

pagetop