空をなくしたその先に
王都の病院へとダナを入院させてから、

ビクトールは一度も彼女の元へは訪れようとしなかった。

彼本人に王都までの往復に耐えうるだけの体力がまだ戻っていなかったというのも理由の一つではあったが。

我ながら意気地ないと思いながらも、サラを派遣するだけだった。

見たくはなかった。
傷ついたダナの姿など。

息子を失ったのも大きな打撃だった。

それに加えて、重傷を負った親友の娘の姿を見ることなど、耐えられそうにもなかった。

それが息子の選んだ相手だとしたらなおさら。


「どうした?座らないのか」


王立病院から戻ってきたサラは、ビクトールの前にダナの容態を記した紙をつきだしたが、

そばにおいた椅子には座ろうとはしなかった。


「座れないんです」


くるりと後ろを向いて、「ここから、ここまで」と尻のあたりを指さして説明した。
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