空をなくしたその先に
「ダナへ移植する皮膚が必要だというので、提供してきました。

しばらくは、横向きに寝ないといけませんね」


苦笑混じりに言うと、半分起き上がり、

半分横になった形で長椅子に座をしめているビクトールの頭の方へと回る。

一つ一つの数値を具体的にあげながらダナの容態を説明すると、下唇を軽くかんで元の場所へと戻る。


「痛むのか?」

「たいしたことはありませんけれど。

何というかひりひりする感じがして不愉快ですね」

「すまないな。サラがいてくれて、本当に助かった」


素直な言葉に、サラは破顔する。

そんなサラに、ビクトールは王宮からもたらされた知らせを告げた。


「貴族様に叙任してくださるんだとよ。

息子を亡くしてさぞ落ち込んでいると思われたらしい」

「……家族を亡くして、落ち込まない人なんています?」

「それはそうだがな」


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