空をなくしたその先に
9.ディオの決意
「結局、身体が元に戻るまで一年半。

顔の方はそれからさらに四ヶ月かかったわ」


ディオの前に。

膝を抱えて座り込んだダナの話はまだ終わらない。


「毎朝鏡を見る度に、知らない人を見るような気がするの。

こんなの、あたしの顔じゃないって……。

いつになったら慣れるのかもわからない」


ディオは言葉を失っていた。

自分と同じ年頃なのに、はるかに壮絶な世界を生きてきたダナ。

そんな話をしろとせまった自分は、なんと無責任だったのだろう。


「親を亡くして、ヘクターを亡くして、自分の顔まで失って。

全てを亡くしても。
それでも。

まだ、飛びたいと思ってしまう。

どうしようもない愚か者って、あたしのことね、きっと」


くしゃりと顔がゆがんで、涙が落ちた。

ほんの一粒だけ。

それをディオは見逃さなかった。

< 143 / 564 >

この作品をシェア

pagetop