空をなくしたその先に
暴れるダナを強引に抱え込む。
相手が本気になれば、抜け出されてしまうだろうから。

今のうちに話をつけるしかない。

ディオは早口で続けた。


「ものすごく寒いんだってば。
何しろ、あったかいふかふかのベッドでしか寝たことがないしね」


実際には、大学の寮のベッドは石のように堅いし、

冬ともなれば凍えそうなほど寒いのだが、
そのことは今言う必要はない。

ディオを押し退けようとしながら、ダナがわめく。


「だからってこんなにひっつく必要ないでしょう!」

「君があっためてくれなかったら、風邪ひいてしまうかも。

うん、なんかぞくぞくするんだよね。背中が」

「……これだからお金持ちのおぼっちゃんはイヤなのよ」


そう言うダナの口調から、棘がほんの少しだけ抜けていることにディオは気がついた。

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