空をなくしたその先に
「ごめんなさーい」


謝罪の色が少しも混じっていない口調でダナは言うと、


「これ、どうしますか?」


拾い上げたボウルを、投げ終えたままの形で固まっている女性に差し出した。


「あら……、どうも、ありがと」


女性は気の抜けた様子で、ボウルを受け取った。


「ニースから聞いてるわ。
何もないけど、どうぞあがっていって」


年の頃は二十代後半だろうか。
細身で一見華奢に見えるが、ボウルが飛んできた速度から判断すると、

身体的能力には恵まれているようだ。


「うちの馬鹿旦那と馬鹿義弟がご迷惑をおかけしたんですって?

本当に何て言ったらいいのやら」

「ニースのやつ、どこまでしゃべったんだよ」


ようやく後頭部をさすりながら、うずくまっていたグレンが立ち上がる。


「強盗未遂まで話してくれたけれど?」

「あの馬鹿」

「……馬鹿?」


ミーナの眉が跳ね上がるのをディオは見た。

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