空をなくしたその先に
つい近頃、同じような表情を見た覚えがある。

危険信号。

ディオの脳内をその言葉が走り抜ける。


「馬鹿はあんたでしょうがっ!

さっさと港に行って荷おろしでも手伝ってきなさい!

まじめに働いてりゃどうにか食っていけているというのにさ!」


ミーナはダナを横に押し退け、ディオを反対側に押しやると腕を組んでグレンを見上げた。


「ニースは荷おろしに行ったけど……あんたはどうする?」

「俺の昼飯は?」

「抜きに決まっているでしょう!」


ミーナは膝を胸に押しつけるように高く持ち上げると、

そのまま足の裏でグレンを蹴り出した。


「夕方まで帰ってこないで!」


ばたりとドアをしめ、さっさと鍵をおろす。

ドアの向こうで、グレンが何か叫んでいたが、

すぐにその声は聞こえなくなり、階段を降りていく足音が続いた。


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