空をなくしたその先に
失礼なのかもしれないと思いながら、ディオは財布を差し出した。


「こんなに親切にしていただいたのに、僕たち何もお礼できなくて……」

「やだ、やめてよ。

もとはと言えば、家の人たちが迷惑かけたのだし」


ミーナはあわてて手をふった。
それから厳しい顔になって、ディオを見つめる。


「手持ちのお金は大事にしなさい。

所帯を持ったんでしょう?

運良く仕事が見つかったとしてもよ?

すぐにお給料がもらえるとは限らないのだから」


それからディオの財布を取り上げると、中から一枚だけ、それも一番少額の紙幣を抜いた。


「そうは言っても、それじゃあなたたちも困るわよね。

食事にかかった分だけもらっておくわ」


財布をディオに戻すと、ミーナは時計を見上げた。
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