空をなくしたその先に
なんとか寝かしつけて、ディオは一度部屋を出た。

医務室にまで行けば薬がもらえるはずだ。

薬をもらって戻ってくると、ダナがベッドから恨めしげな声を出した。


「どこ……行ってたの」

「医務室。ほら、薬飲んで」


もらってきた薬を飲ませて、もう一度寝かしつける。


「すぐ慣れるよ」

「ディオだけ、元気でずるい」

「そういう問題?」


すねた口調に、思わず笑いがこぼれる。

ベッドから離れようとしたディオの袖をダナがつかんだ。


「だめ。どこにも……行かないで。ここにいて」


真剣な目で見上げられ、ディオは苦笑混じりにベッドの端に腰をおろす。


「……どこにも行かないから。少し寝るといいよ」


素直にダナは目を閉じる。
ディオの袖をつかんだまま。

ディオは、ダナを見下ろした。
顔の右半分は枕に埋もれている。

長い睫に覆われた目元にはひどいくまができている。

< 193 / 564 >

この作品をシェア

pagetop