空をなくしたその先に
いくらひどい場所で寝るのには慣れていると本人が言って
いたとはいえ、かなり疲労していたはずだ。

何かあればまずディオを休ませて、その間彼女はずっと起きていた。

船に乗り込んで緊張の糸がゆるんだ、ということか。

袖をつかまれたままなのも、頼られるのも悪い気はしない。

捕まれていない方の手を伸ばして、頬の線にそってなでおろしてみる。

聞き取れない言葉をつぶやいて、ダナは布団の中に潜り込んでしまった。

苦笑して、ディオは天井を見上げた。

見慣れている王室専用船より、だいぶ低い天井。

そこに小さな明かりが一つだけつけられている。

夜になればここに電気が灯されるようだ。

ダナがつかんでいるのが、ジャケットの袖だけだということに気がついて、そっと袖を抜く。

内ポケットにしまったままの研究成果の入った封筒が、ベッドの上に落ちた。

ディオはそれを拾い上げて、窓からの光に透かしてみる。

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