空をなくしたその先に
長椅子から見上げる空も、
甲板の手すりの間から見える空も、
どこまでも真っ青だ。

まさしく航海にはいい日だ。

今航行しているのは海ではなくて空だけれど。

手にした雑誌をめくってはいるのだが、
内容は少しも頭に入ってこない。

女性の最新ファッションになんて、最初から興味はないのだから当然だ。

廊下の雑誌立てから一冊適当に抜き出してきたのだが、
暇つぶしにもならない。

ディオはそっと胸に手をあてた。

上着の内ポケットにしまいこんだ書類を、
なくすことになったら大変だ。
一七でセンティアの大学に留学して二年。

その間国には一度帰っただけだ。

もうじきくる誕生の日を過ぎれば一九になるが、
親からはいまだに子ども扱いされているのを感じずにはいられない。

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