空をなくしたその先に
食事時をはずれてしまったということもあって、食堂は空いていた。

さっさとすませて、今度は甲板へと移動する。

甲板だけは、どの階層の客にも公平に解放されている。

子どもたちが走り回っている。
手すりにもたれて海を眺める人もいれば、用意された椅子に腰をおろしておしゃべりに夢中な人たちもいた。


「平和ねー」


海の風にダナの髪がなびく。

地毛では目立つからと、ミーナに買ってもらったかつら着用のままだ。

長い毛先に鼻をくすぐられて、ディオはくしゃみをした。

他にすることもないので、適当に甲板をうろうろとしてみる。

ダナが言うには、多少揺れることをのぞけば、空とたいしてかわりがないらしい。

数時間の睡眠でだいぶ回復したのか、船酔いもおさまったようだ。


そろそろ船を一周しようかという頃だった。


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