空をなくしたその先に
「ニュースで……言ってたんだ。

センティアの、研究所。

……僕がいた研究所が武装集団に襲われたって」


ダナの身体に力が入るのが、ディオにはわかった。


「それで?」

「研究所内にいた人間は……誰も生き残ってないだろうって。
今、火事になっているみたいで詳細はまだ、なんだ」


もう片方の腕が、ディオの身体に巻きつけられる。

ぎゅっと抱きしめられて、ディオは息を飲んだ。

直接伝わってくる体温。

自分だけが生き残ったことを痛感させられる。


「ディオ……それって……」

「研究所に行けば、僕が持っているものの原本があるからね。

彼らの目当てはそれだったのかもしれない」


ダナの肩に顔を埋めて、ディオは小声で言った。


「僕だけが生きているんだ」


脳裏にうかぶのは、仲間たちの顔。

ディオの急な帰国を残念がって、

戻ってきたらまた飲みに行こうとそう約束したばかりだったのに。
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