空をなくしたその先に
ダナが身体を離した。

両手で、しっかりとディオの肩をつかんで顔を見すえる。


「しっかりしなさい。

今、あんたがやらなきゃいけないことは何?」


肩をゆすられるのにあわせて、ぐらぐらとディオの頭が揺れる。

何も考えたくない。

考えられない。

全てを投げ出して、安全な場所に逃げてしまいたい。

何があったのか、ラジオのニュースでしか知ることができないから不明確だ。


「ディオ」


ダナの声が厳しくなった。


「あえて蒸し返さなかったけど。

あんたの持っているものっていったい何なの?

研究所の人全員殺してまで奪う必要があるものなの?

研究所が襲われる他の理由は考えられないの?」


ディオははじかれるように立ち上がった。


シャワーに行く前、ベッドの上に放り投げた上着の内ポケット。

薄い封筒を引っ張り出す。


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