空をなくしたその先に
「何よ、これ!どういうこと?」


部屋の中は荒らされていた。

クローゼットの中身は床の上に放り出されている。

二人のスーツケースも蓋を開けられていた。

ベッドのシーツもはがされ、床に引きずりおろされ、枕もあるべき場所にはない。

ダナの表情が変わった。

つかつかと部屋の中央まで進んで、そこに放り出されていたゴーグルを拾い上げる。


「ディオ、あれは?」


問われてディオは上着の内ポケットを押さえた。


「大丈夫。持ってる」

「他に無くして困るものって?」


ディオはポケットに手をつっこむ。


「旅券、財布……あ!」


声をあげて、ディオは床の上にかがみ込んだ。

目を皿のようにして探すが、もとめていた物はどこにも見あたらない。


「預かってたお金がない!」

「それがないと困るの?」

「そうだね、列車の切符が買えない程度には」


ダナの口角が下がった。


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