空をなくしたその先に
「それって財政的に逼迫してるってこと?

どうして持ち歩かなかったのよ?」

「あんな大金持ち歩けるわけないだろ?

部屋には鍵をかけたし、
スーツケースにも鍵かけたし、
持ち歩くより安全だと思ったんだよ」


とがめられて、ディオの声もとがった。

だいたいディオにそれを預けたのはダナなのだ。

今さら文句を言われても困る。

部屋の外にまで響き渡る二人の声に、船員がかけつけてきた。

部屋の中の惨状を目の当たりにして、慌てて上司を呼びに走る。

呆然としているディオを放置して、ダナは部屋の鍵を確認した。

こじ開けられたような傷がある。

ただの物取りなのか、それともディオを狙ったものなのか。

現状では判断をくだすことはできない。

今失われたのが、現金だけだとしても。

ダナの手が、そっと自分の腿をおさえる。

銃にナイフ、小型の爆弾。
全てそこに巻きつけてある。

船の中でこれを使わなければならない事態がおこらなければいいのだが。
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