空をなくしたその先に
呼ばれてきた上級の船員も、鍵の状態を確認してうめいた。

船の中に盗人がいるということになる。

被害額を聞かれて、ディオは正確な額を伝えた。

あまりの金額に船員の顔に不審の色が浮かんだ。

彼女と駆け落ちをしたため、

ありとあらゆるところからかき集めた現金だったのだと相変わらずの作り話に、

一気にそれが同情へと変わる。

両手を腰に当てて、部屋の中からディオを睨みつけていたダナは唇を突き出して言った。


「これからどうするの?」


たずねられても、考えなどあるわけがない。

それより今夜この部屋で寝る方が不安だ。

簡単にこじ開けられる鍵などかける意味がない。

船員たちは一応犯人を捜すとは言ってくれたが、当てにするわけにもいかない。

警備のしっかりしているところと言えば、心当たりは一つしかない。


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