空をなくしたその先に
「……フレディのところで寝かせてもらおう。

ダナは嫌だろうけれど、ここで寝るよりよほど安心だと僕は思う」


二等客室の乗客が、特別客室のある階に立ち入るわけにはいかない。

知人がいると船員に説明して、フレディを探してもらうと、いかにもパーティに出かけますといった正装で現れた。

伝言を頼んだだけのはずなのに。


「こりゃ、ひどいなあ」


部屋の中の惨状を目の当たりにして、フレディはある意味感心したような口調で言った。


「俺の部屋、寝室四つあるから好きなのを使えばいい。

ああ、君は俺のベッドでもかまわないけど」

「冗談でしょ?」


肩に回された手を勢いよく払い落として、ダナは眉を吊り上げる。


「今度あたしに触ったらひっぱたくわよ?」

「おー、怖い怖い」


少しも怖くなさそうな口調で言うと、フレディは鍵をディオに渡して、来たとき同様ふらりと消えた。
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