空をなくしたその先に
「そこまで獣じゃないと思うけど」


苦笑混じりに言って、ディオはつけたした。


「なんだか今日はいろいろとやる気になっていたみたいだし、この部屋には戻ってこないかも」

「それならいいけど。ディオと一緒にいる方が安心だわ」


自分は安全だと思われているのか、信頼されているのか。

いずれにしても複雑な気分ではある、が。

昨日以前のような口を聞けるようになったのは、嬉しかった。

「戻ってきたら、またあの店に飲みに行こうぜ」

「なんかイザベラって娘が、ディオのこと気に入ってるって話だからさ。

今度はうまくやれよ」

どこかで聞いたような会話だと、ディオは思った。

ああ、そうだ。

父が倒れたから国に戻るのだと知らせた時に仲間たちとした会話だ。


「それでうまくやれるのなら、苦労はしないよ」


そんな風に返したのだと、頭の後ろの方でディオは考える。

こんな会話を交わすことは二度とない。

皆、炎の中。

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