空をなくしたその先に
フレディは彼の知る限り放蕩人という言葉が一番ぴたりとはまる人間だ。

暇さえあればあちこちの夜会に出かけ、
招待されていない時には、街へと繰り出す。

一人寂しくベッドで寝ることはほとんどないという話で、
そっち方面の武勇伝には事欠かない。

彼自身、武勇伝を吹聴しているふしもある。

金の使い方も豪快で、一晩で家一軒が買えるほどの金額を浪費したこともあるという。

自分とは別種の人間だと半ば珍獣を見るような気持ちで眺めていたし、それで十分だった。

一人でこの広い部屋を使っているのを知って、それだけではないと初めて思う。

欠けた何かを浪費で埋めようとしているのかもしれない、と。
彼の抱える深淵をのぞき込んでしまったような気がした。

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