空をなくしたその先に
空と船しか知らなかった。

それで満足だったし、
それ以外の世界を見てみたいとも思わなかった。

ディオと逃げ出してから、その枠が外されてしまったようだ。
知らなかった人たち。知らなかった世界。

空を去る気などないけれど、違う世界を見るのはわくわくする。

ディオが腕をひいた。


「人が来る」


音がしないようにドアを閉めて、二人は駆け出した。

特別客室に戻ると何故か笑いがこみあげてきて、
二人そろって床の上に座り込む。

たいして悪いことをしたわけでもないのに。

笑いの発作は数分にわたって続き、先に立ち上がったのはダナだった。


「ちょっといいわね。
ああいうの」

ダナはディオに手を差し伸べる。

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