空をなくしたその先に
「警察の事情聴取ほったらかしてきたからな」


男が舌打ちした。

もう一度、フレディに襲いかかる。

今度の攻撃は、
殺そうとしたものではなく退路を確保しようというものだった。

フレディを進路から退けておいて、路地から飛び出していく。

悪態をついて、フレディは銃をしまった。


「ダナ……!ダナ……!」


ディオはダナの名を呼び続けた。

名前を呼んで、抱きしめて、肩をゆするが返事はない。

フレディがゆっくりと近づいてくる。


「どけ。まだ間に合うかもしれないぞ」


フレディは二人の間に割って入って、彼女を地面に横たえた。

顎を持ち上げ、気道を確保すると迷うことなく唇を重ねた。

息を送り込む。

一度、二度。


「だめか?いや、戻ってこい」


フレディはもう一度息を送り込んだ。

今度はかすかにうめいて、ダナが首をふる。

薄く開いた口から、最初の言葉がこぼれた。

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