空をなくしたその先に
そこは応接のための部屋なのか、

あちこちに座り心地のよさそうな椅子やソファがおかれていた。

入ったところでディオがきょろきょろと部屋の中を見回していると、

一度閉じられた扉がもう一度開かれた。

イレーヌと同じように黒と白を基調とした衣服のメイドが

お茶の道具を載せたトレイを手に入ってくる。

物音一つたてない滑らかな動作で、テーブルの上に茶道具を並べ、

頭を一つ下げて一言も言わないまま出ていく。

続いて入ってきた別のメイドが軽食に茶菓子を並べて、

こちらも言葉を発することなく退室した。


「お座りになって」


肩からずりおちたレースのショールを直しながら、イレーヌは二人に席を勧めた。

優雅な仕草でティーポットを取り上げると、慎重な手つきで三つのカップに分けて注ぐ。

いい香りが立ち上った。

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