空をなくしたその先に
イレーヌはカップの一つを手に取ると、そこに角砂糖を四個放り込んだ。

丁寧に掻き回してから、そのカップをディオに差し出す。


「さあ、どうぞ」

「……でも」


いくら何でも砂糖四個は多すぎる。

ためらうディオにイレーヌは重ねて言った。


「子どもは大人の言うことを聞くものですわ。

今のあなたにはこれが必要なのだから、お飲みなさいな」


口には出さなかったが、

子どもではないとディオの目に浮かんだ抗議の色をイレーヌは見逃さず、

ころころと笑ってつけたした。


「私の年齢を聞けば納得なさる?
四十はとっくにこえていますのよ」


さらりと自分の年齢にふれる彼女に驚かされた。

今までディオの周囲にいた女性は、皆成人したら年のことには触れないようにしていたから。

「俺には入れてくれないのか」


砂糖の入っていないカップを渡されて、フレディが不満の声をもらした。
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