空をなくしたその先に
「ご自分でどうぞ」


自分の分には砂糖を一つだけ入れて、

イレーヌはソーサーごとカップを手に取った。

つられるようにディオもカップを手にした。

受け取った以上、口をつけないのは失礼だとカップを口まで持っていく。

用心深く一口すすった。

大人の言うことは聞いておくものらしい。

ほっと息をついて、改めてイレーヌを見ると、
クッキーに手を伸ばしているところだった。

目元だけで微笑みかけられて、思わず目をそらす。

頬に血がのぼるのがわかった。
不思議な女性だ。

こうして過ごしていると、大量の武器を売り買いしている人間とは思えない。

王宮の一室に座っていてもおかしくないほど、気品が備わっているようにも見える。

「迷惑かけたな」

「いつものことでしょう?」


フレディを見る彼女の目は優しかった。

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