空をなくしたその先に
「診断の結果にもよるでしょうけれど、

あの子は、数日は安静にしていた方がいいのではないかしら。

先に坊やだけ送るように手配いたしましょうか?」

「そうだな」


思慮深げにフレディはディオを見る。


「だめだよ」


ディオはカップを置いた。


「二人でって約束したんだ。彼女を置いては行けない」


あの戦火の中、二人を空へと送り出してくれたビクトールに。

通りすがりの二人に、黙って手を貸してくれたミーナ、グレン、ニースの三人に。

足をひっぱることしかできていないけれど。

それでも、確かに約束をしてきた。

その約束を先に破ったのは、ディオだけれど。

取り返しのつかない事態から、紙一重の差で逃れることができた今だからこそ、

その約束を破るわけにはいかない。


「特別列車を仕立てるという手もあるのだけれど……」


イレーヌが二杯目のお茶を注いだ。

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