空をなくしたその先に
「こいつの正体そんなにばればれか?」

「そうでもないのではないかしら?

ねらっている連中も、上役はともかく下っ端には、ただの学生で通しているみたいですし。

一国の王子を殺害したとなれば大問題ですものね。

ただの学生ならいくらでもいいわけはきくでしょうけれど」

「あんたの情報網はどうなっているんだ」


首をふるフレディの腕に手をかけて、イレーヌは婉然と微笑んでみせた。


「どの商売でもそうだけれど、特にこの商売は情報が命。

どことどこが戦争になるのかわからなければ、

効率的に武器を売り込むことなんてできませんもの」

「たまには自ら火種を起こしたりするんだろ?」

「ないとも言いきれませんわ」


イレーヌの姿は、
まさしく死を扱うにふさわしい言いしれぬ迫力に満ちていた。
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