空をなくしたその先に
あの精神力には感心させられますが、と医師は苦い顔だ。

あらあらまあまあと、イレーヌは腰を浮かせかける。


「彼女……アーティカの人間だから」


その言葉を口にしたのは、

ディオの正体を知られている今、

ダナの正体についても隠さねばならない理由が感じられなかったからだ。

聞いて、フレディは顔色を変えた。

包帯を巻き終えたばかりの医師をつき倒しかねない勢いで立ち上がり、ディオにせまる。


「アーティカって言ったよな、今。彼女年はいくつだ?」

「十……八……になったかな?」


今何歳かということは聞いていないが、ヘクターの死は二年前。

当時十六だと言っていたから、だいたいそのあたりのはずだ。
ディオの返答に、フレディは顎に手を当てて考えこむ。


「別に珍しい名前じゃないしな……」


と、つぶやくのが聞こえた。
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