空をなくしたその先に
フレディは上着のポケットに手をやった。

取り出したのは、手のひらに収まるほどの小さなケース。

ダナの眉間にしわが寄った。

扉を背に立ったままのダナの前に、フレディは膝をついた。

まるで恋人に結婚を申し込む時のように。


「もっと早く気がつくべきだったんだ。

あいつが石を選んで、俺が台の注文を手伝った。

あいつ、こういうことには不器用だったから」


うやうやしいほどの手つきでケースの蓋を開く。


「君の瞳と同じ色のエメラルド。

次の任務が終わったら渡すつもりだから、受け取っておいてほしいと頼まれていたんだ」


中央に鮮やかなエメラルドがはめられた指輪を見て、ダナが顔をおおった。

あふれる涙をこらえるかのように、肩が二度三度と上下する。
「やっぱりつらかったか?」


顔を隠したまま、ダナは首を横にふった。

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